1999 年 35 巻 2 号 p. 226-230
診断的腹腔洗浄法(diagnostic peritoneal lavage ; DPL)によって確定診断できた外傷性空腸穿孔の女児例を経験した.患児は4歳で腹部打撲のため当科入院となり理学所見や画像診断では開腹の判断が出来なかったためDPL施行し, この判定に従って開腹したところ空腸穿孔が発見された.腸管, 特に小腸の損傷は腹部理学所見に乏しいことが多く, 加えて腹部X線写真やCT等の画像診断で明瞭な変化が出にくいため手術適期を逸する可能性がある.かかる損傷の有力な診断法の一つとしてDPLは位置づけられ, 小児例においてもその有用性は高いと思われる.小児腹部鈍的外傷は日常よく遭遇する疾患であるが, 特に頭部外傷による意識障害や骨盤・胸部外傷を合併したために腹部所見が判然としない例ではDPLを積極的に用いるべきであろう.