2001 年 37 巻 5 号 p. 800-804
【目的】MRSA保菌者に対する術前術後の感染対策を考えるために, MRSA保菌と術後創感染との関連を検討した.【対象】8年間の人工肛門閉鎖症例86例中, MRSA保菌者は21例であった.術後抗生剤はセフェム系とアミノグリコシド系またはCLDMの併用を基本とし, MRSA保菌者のうち9例でABK, 9例でVCMを追加した.【結果】術後の創感染はMRSA保菌者が4例(19.0%), MRSA非保菌者が3例(4.6%)であった.MRSA保菌者で創感染を合併した4例中3例で創部よりMRSAが検出された.MRSA保菌者でABKまたはVCMが追加された12例中3例で創感染を合併したのに対し, 通常の抗生剤を投与した9例では1例のみの発症であった.【結論】MRSA保菌者では術後創感染の頻度が高かった.ABK, VCMの予防投与は効果がなかった.