日本小児外科学会雑誌
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先天性横隔膜ヘルニアにおける左心発育不全 : 心エコーおよび剖検所見の検討から
今泉 了彦岩中 督新井 真理川嶋 寛工藤 寿美藤代 準
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2002 年 38 巻 1 号 p. 19-25

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抄録

【目的】横隔膜ヘルニアでは, 肺低形成とともに左心機能低下が予後を悪くしている可能性がある.胎生期の臓器の胸腔内脱出は肺低形成を生じ, 同時に心臓の発育を妨げ心機能に影響していると想定される.心エコーおよび剖検所見から本症の心臓の病態を検討する.【方法】1988年2月から2000年12月間の早期発症横隔膜ヘルニア38例について, 術前心エコーMモード法により左室拡張末期径, 収縮末期径を測定し, 拡張末期容量(LVEDV), 1回心拍出量(SV), 分時心拍出量(CO), 左室駆出分画(EF)を求め, 循環障害のみられない新生児外科疾患を有するコントロール群と比較した.AaDO_2に基づく重症度と左心機能の相関についても検討した.また手術前後でLVEDV, SVの値を比較し手術の左心機能への影響を検討した.早期に死亡した6剖検例の心臓重量, 心体重比を求め, 本邦正常値と比較した.【結果】本症38例の術前の測定値(M±sd)は, LVEDV 13.9±7.2 ml/m^2, SV 8.8±4.7 ml/m^2, CO 1.24 l/min/m^2, EF 64.7±13.3%であった.LVEDV, SV, COはコントロール群に比べ有意に低く, また重症例ほど低値であった.EFは有意差はなかった.LVEDV低値群では, 臨床的には浮腫, 尿量減少, 血圧低下など循環不全の症状がみられた.手術後LVEDV, SVは有意に改善した.本症剖検例の心重量, 心体重比(0.0041±0.0009)は正常児に比べて有意に小さく, 心体重比は正常児の62%であった.【結論】本症では左心室容積の低下, 1回心拍出量・分時心拍出量の減少を示し, 呼吸障害の高度な重症例ほど左心機能の低下は著しかった.剖検所見からは, 本症では心総重量, 心体重比は低く, 心発育不全がみられた.

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