2002 年 38 巻 6 号 p. 855-858
思春期に身長, 体重の増加速度が正常に見られ, その後急速に肝不全となり肝移植が必要となった3症例を報告した.葛西手術はそれぞれ生後68, 78, 80日に行われた.総ビリルビン値は, 2例に1年以内に1.0mg/dl以下となったが, 1例に3mg/dlで遷延した.門亢症に対し, 2例に2歳時に食道離断・脾摘が, 1例に5歳時より内視鏡的硬化療法が行われた.2例に10, 13歳頃より成長曲線を越えて+1SDまで急速に成長したが, 15, 19歳で肝移植となった.他の1例は黄疸遷延例で, 成長曲線に沿った成長であったが13歳時に突然胆管炎が繰り返し急速に肝不全へと向かった.前者2例は生存したが, 後者1例は肺内シャントを有し, 移植後脳血栓で死亡した.今回の経験より, 中等度の肝硬変を伴った場合, 思春期における成長のスパートが正常に見られても, その後の体を肝臓が支えきれるかどうかの保証はなく, 肝移植の時期決定における考慮すべき情報のひとつである.