2004 年 40 巻 5 号 p. 681-686
自転車による腹部鈍的外傷後に膵仮性嚢胞を合併した7歳,男児の1例を経験した.症例は受傷後3日目に膵仮性嚢胞と診断され保存的に治療されていたが,34日目に嚢胞の破裂により発熱,背部痛,腹痛などが出現.急性腹症として緊急開腹ドレナージ術を施行した.その後,症状は軽快したが,嚢胞径の増大と高アミラーゼ血症が持続し,66日目,嚢胞胃吻合術を施行した.しかし,膵液のドレナージが不十分であったため嚢胞の再破裂をきたし,96日目に嚢胞胃再吻合術を必要とした.本症例は膵仮性嚢胞の破裂はいつでも起こり得る重要な合併症であることを示しており,外傷性膵損傷あるいは膵仮性嚢胞の治療に際してはこれを念頭に慎重な観察を行い,また嚢胞の破裂に対しては迅速かつ的確に対処することが重要である.