日本小児外科学会雑誌
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Stage 4神経芽腫における分化関連遺伝子(trk A, trk B, c-srcN2)の発現様式と予後層別化に関する検討
松永 正訓照井 エレナ吉田 英生幸地 克憲黒田 浩明菱木 知郎山田 慎一川村 健児江東 孝夫大沼 直躬
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キーワード: 神経芽腫
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2005 年 41 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

【目的】マススクリーニング発見例を除いた神経芽腫Stage 4の予後は, 現在でも極めて不良である.これらの症例における分化関連遺伝子の発現様式の臨床的意義と予後層別化の可能性, 治療の展望につき考察を加える.【対象と方法】当科ならびに関連施設で治療した神経芽腫Stage 4臨床的発見例の24症例を対象に, N-myc (MYCN)遺伝子の増幅をSouthern法で, trk A, trk B, c-srcN2遺伝子の発現を競合的半定量RT-PCRで解析し, 予後との関連を統計学的に検討した.【結果】N-myc増幅, trk A低発現, trk B高発現の症例は短期間に死亡しており予後不良の傾向があったが, 長期成績では統計的に有意差を認めなかった.一方, c-srcN2高発現の症例は有意に予後良好であった.N-myc増幅症例は, trk Bの発現の有無でイベントの発生時期に違いがあり, trk B発現腫瘍は薬剤抵抗性で早期に死亡していた.N-myc非増幅症例は, c-srcN2の発現で層別可能であり, c-srcN2高発現腫瘍は現在の進行神経芽腫研究班プロトコールで十分な治療成績が得られていた.また, N-myc増幅/trk B非発現腫瘍と, N-myc非増幅/c-srcN2低発現腫瘍では一時的に寛解に至るものの高率に再発を来す傾向があった.【結論】分化関連遺伝子の増幅と発現様式を組み合わせることで, Stage 4神経芽腫の予後層別化が可能であった.現在の治療で殆ど効果が見られないグループや寛解後に高率に再発を来すグループに対しては新たな治療法の開発が必要であると思われた.

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