2005 年 41 巻 1 号 p. 33-36
症例は15歳, 女児.右上腹部の激しい痛みおよび発熱を主訴に当科を受診した.超音波上所見なく, 入院の上抗生剤cefmetazole sodiumの投与を開始するも著効がみられなかった.入院2日目に不正性器出血があり婦人科を受診したところ, 子宮頸管分泌物よりChlamydia trachomatis抗原が検出された.また, 腹部造影CTにて肝被膜が濃染されたため, Chlamydia trachomatis感染に伴う肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis syndrome : FHCS)と診断した.Clarithromycinの経口投与にて症状は速やかに改善し, 第8病日に退院となった.FHCSは急性腹症として発症するため小児外科医が診る可能性の高い病態と考える.本邦での小児例の報告は未だ少ないが, 性の低年齢化に伴い今後確実に増加すると思われる.性的活動のある年長女児の右上腹部痛を診察する際は本症も念頭に置くべきである.