日本小児外科学会雑誌
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マウス腹膜血管内皮細胞腫モデルに対するdrug delivery system (DDS)を使用した血管新生阻害物質TNP-470の治療効果の検討
中村 成宏八木 誠保田 知生吉田 洋野上 隆司大柳 治正
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2006 年 42 巻 2 号 p. 199-207

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抄録

【目的】血管新生阻害剤TNP-470は血中での半減期が短く,臨床応用に制限がある.この欠点を克服するためdrug delivery system (DDS)を用い,マウス血管内皮細胞腫モデルでの腫瘍増殖抑制効果について検討した.【対象および方法】4週齢のヌードマウスの腹膜にmouse hemangioendothelioma cellを移植した.TNP-470の投与量によりI, II, III, IV群70mg/kg, 100mg/kg, 150mg/kg,生理食塩水投与(各n=15)に分けた.更にV群(非治療群n=10)は死亡するまで観察した.薬剤投与後2日毎及び7, 21日目に体重,腫瘍径を,薬剤投与後7日毎に血小板数,Hb値を測定した.また21日後に屠殺し,血中VEGF濃度,TNP-470の血中濃度を測定した.【結果】1) 7日目のI, II, III, IV群の腫瘍体積は,29.0±12.4mm^3, 12.0±6.4mm^3, 4.6±2.0mm^3, 179.6±49.8mm^3であった(IV vs I, II, III (p<0.01); I vs II, III (p<0.01); II vs III (p<0.05)).14日目のI, II, III, IV群は,36.4±15.0mm^3, 30.4±15.0mm^3, 19.5±8.5mm^3, 299.8±92.6mm^3 (IV vs I, II, III (p<0.01); I vs II, III: II vs IIIいずれも有意差なし)であった.21日目のI, II, III, IV群は,56.4±18.2mm^3, 44.8±20,5mm^3, 19.5±15.0mm^3, 560.4±108.9mm^3 (IV vs I, II, III (p<0.01); I, II, III群間にはいずれも有意差なし)であった.TNP-470投与群では薬剤投与後7, 14, 21日目に腫瘍の増大が非投与群に比して有意に抑制された.2)薬剤投与後21日目のHb値はI, II, III, IV群では,14.0±11.5g/dl, 13.5±1.4g/dl, 14.0±1.2g/dl, 10.5±0.8g/dl (I, II, III vs IV (p<0.01); I, II, III群間では有意差なし)であり,血小板数はI, II, III, IV群では,14.5±2.0×10^4μl, 14.0±1.5×10^4μl, 15.0±1.4×10^4μl,13.0±0.83×10^4μl (I, II, III vs IV (p<0.01);I, II, III群間では有意差なし)であった.血小板数,Hb値は21日目に非投与群で減少したが,投与群は正常に保つことができた.3)血中VEGF濃度はI, II, III, IV群では,5.6±2.48pg/ml, 2.96±0.77pg/ml, 2.1±0.82pg/ml,7.20±1.98pg/ml (IV vs I, II, III (p<0.01); I vs II (p<0.01); II vs III (p<0.01))であった.血中VEGF濃度は非投与群に比して投与群では有意に低値を示した.4)体重はTNP-470投与群で減少し,薬剤投与2日目にI, II, III群の減少率は9.2%,26.2%,30.2%であった.その後体重は回復したが,投与量の増加に比例して回復までに時間を要した.5)TNP-470血中濃度は薬剤投与21日目にI, II, III群では15ng/ml, 20ng/ml, 26ng/mlであり,屠殺時においても有効血中濃度を維持できた.【結論】TNP-470はDDSを用いて投与することにより,マウス血管内皮細胞腫モデルに対して副作用を抑制しつつ腫瘍の増大を抑制できることが証明された.

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