日本小児外科学会雑誌
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小児リンパ管腫に対する最近の治療戦略 : 第34回九州小児外科研究会アンケート調査による217例の検討
阿曽沼 克弘猪股 裕紀洋
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2006 年 42 巻 2 号 p. 215-221

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抄録

【目的】小児リンパ管腫の最近の臨床像,治療戦略,その予後を探るため,九州・沖縄地区で治療された小児リンパ管腫症例についてのアンケート調査を施行した.【対象と方法】九州・沖縄地区の小児外科疾患診療施設にアンケートを依頼し,過去5年間に診断,治療された15歳以下のリンパ管腫症例について発生部位,治療方法,予後などを調査した.【結果】23施設から合計217例についての回答があった.発生部位は頸部87例,体幹50例,腋窩34例,四肢27例で,次いで,顔面13例,縦隔10例,腸間膜8例,後腹膜7例の順であった.治療法としては,硬化療法のみ施行されたものが102例(47.0%),硬化療法と手術の併用が40例(18.4%),手術のみ施行が35例(16.1%)であったが,無治療で経過観察された症例も39例(18%)あった.また,穿刺ドレナージのみ施行された症例が1例あった.硬化療法の薬剤としてはOK-432の単独使用が94.2%を占めた.腫瘍の転帰としては,全体では,消失が88例(40.6%),著明に縮小が64例(29.5%),やや縮小が27例(12.4%)であったが,不変ないしは増大した症例も合計26例(12.0%)あった.硬化療法のみ,硬化療法と手術の併用,手術のみの3群において,消失ないしは著明に縮小効果が得られたものは,それぞれ72.5%,82.5%,88.6%であった.【結論】小児リンパ管腫に対しては,OK-432を使用した硬化療法が第一選択として用いられる傾向が強かったが,手術との併用も施行されていた.全体として約7割に満足する結果を得られていたが,治療に難渋する症例も少なからず存在していた.

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