日本小児外科学会雑誌
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小児膿瘍形成性虫垂炎に対するinterval appendectomyの経験
金田 聡広田 雅行内藤 万砂文
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2008 年 44 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

【目的】小児膿瘍形成性虫垂炎において,臨床症状の軽微な場合,急性期に保存的治療を行って炎症を鎮静し,後日手術を行うinterval appendectomy(IA)を行った.その有用性について報告する.【対象と方法】2000年4月から2006年8月までに,IAを行ったIA群8例と,同期間に膿瘍形成性虫垂炎に緊急手術を行った緊急手術群11例の,入院期間,手術時間,合併症の有無について比較検討を行った.【結果】IA群の初回時の入院日数は平均193日,IA施行時の入院日数は平均6.6日,総入院日数は平均25.9日で,手術時間は平均81分であった.術後合併症は認めなかった.緊急手術群11例では,入院日数は平均16.7日,手術時間は平均92.7分であった.術後合併症として創感染を3例に認めた.入院期間では,IA群の総入院期間は,緊急手術群の入院期間に比べ長期であった(ρ=0.0008).手術時間の比較では,両群間に有意差は認めなかったが,IA群の長時間かかった特殊な1症例を除くと,IA群では短い傾向にあった(ρ=0.0851).合併症は,IA群では認めていないが,有意差は認めなかった.なお,入院時IAの方針とした症例は,緊急手術群に含まれる途中で緊急手術となった5例と,保存的治療で炎症はおさまったが家族の希望でIAを行っていない1例を併せ14例であり,保存的治療の奏効率は64.3%(9/14)であった.【結論】小児膿瘍形成性虫垂炎に対するIAは,総入院期間が長くなる傾向があるが,手術の難易度が軽減される可能性が高いなど,有用な点が多いと考えられ,推奨される治療方針と思われる.

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