2008 年 44 巻 2 号 p. 153-157
症例は4歳,男児.3日間持続する腹痛を呈し急性腹症の診断にて当院に紹介された.臍周囲の腹痛は腹膜刺激症状を伴わないが,血液検査では強い炎症反応を認めた.腹部CTでは腹水や虫垂の腫脹を指摘できなかったが,左肺底部に1.5×1.9×4.7cm大の腫瘤を認めた.入院後,左血性胸水の増加,腫瘤の増大傾向,炎症反応の高値が持続し,炎症性肺腫瘤,悪性腫瘍も否定できない経過であった.左胸腔ドレナージと抗生剤投与により炎症反応は改善したため,14病日に左開胸による腫瘤摘出術を施行した.病理所見から肺葉外肺分画症の茎捻転と診断された.術後5日目に後天性横隔膜ヘルニアを発症し横隔膜縫縮術を追加した.以降は順調に経過し29病日に軽快退院した.肺葉外肺分画症の茎捻転による急性腹症を呈した極めて稀な症例と考えられたので報告した.