2008 年 44 巻 5 号 p. 689-694
症例は3歳男児.脳性麻痺に伴う球麻痺のために気管切開管理を行っていたが上気道感染を繰り返した.このため精査を行い胃食道逆流症と診断し,Boerema-Filler法による噴門形成術と胃瘻造設術を施行した.術後2日目に盲腸穿孔による汎発性腹膜炎を発症した.穿孔の原因は盲腸が捻転しその内圧が上昇したためと考えられ,回盲部切除とドレナージを施行し救命しえた.盲腸捻転は,小児の急性腹症の中では稀で,重症心身障害児に比較的多いとされるが,特異的症状に乏しいため早期診断は困難である.腸管の壊死がなければ,捻転を解除し盲腸と上行結腸を後腹膜に固定することが一般的であるが,固定後の再発例も認められるため,確実な固定が困難な場合には腸管切除も考慮すべきと思われる.脳性麻痺例に消化管穿孔を含む急性腹症をみた場合,盲腸捻転を念頭におく必要があると思われた.