抄録
我々は比較的稀な胸骨裂の1例を経験したので報告する.在胎31週の胎児エコー検査にて心臓の位置異常を指摘されていた.在胎37週4日,帝王切開にて出生.出生直後より,下部胸骨の欠損と心窩部に突出する心拍動を認めたが,皮膚欠損は認めなかった.胸部レントゲン検査にて心陰影および縦隔の右側への偏位を認め,胸部CT検査では心臓のレベルで胸骨が消失する胸骨下部欠損と心臓脱を認めた.心エコー検査上心内奇形を認めず,不整脈等の所見もなく経過した.日齢55,不完全部分心臓脱を伴った下部胸骨裂の診断にて胸骨延長術を施行した.術中術後の心エコー検査では循環動態に異常を認めず,経過は良好で術後12日に退院となった.胸骨裂の治療にあたっては,心臓脱や心奇形などの合併症の有無により手術時期,術式など治療方針を慎重に決定する必要がある.