日本小児外科学会雑誌
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Nuss法における術後バーの変位とバー固定法の工夫に関する検討
黒部 仁馬場 優治平松 友雅大橋 伸介金井 正樹芦塚 修一吉澤 穣治大木 隆生
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2009 年 45 巻 7 号 p. 1049-1054

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抄録

【目的】漏斗胸に対するNuss法において,バーの変位は重大な術後合併症の1つである.これを防ぐために4種類のバーの固定方法を施行してきた.各々の固定方法における術後バーの変位を認めた症例を検討し,原因と術式の妥当性,今後の対策を考察した.【方法】2001〜2007年に当科でNuss法を施行した88例を対象とした.以下の4種類のバー固定法を行った.固定法1:バーのみを両端の溝と孔にて固定.固定法2:固定法1にスタビライザーを追加.固定法3:固定法2にバーの胸腔内への挿入部近傍からバーと肋間筋とを数か所追加固定.固定法4:固定法3に3点固定も加えた方法.各々の固定法における術後バーの変位した症例をretrospectiveに検討した.【結果】固定法1は3歳児の1例のみで,バーの上方への軽度の変位を認めた.固定法2を施行した26例のうち,4歳,6歳および16歳の3例に術後3日から1か月でバーが上方へ軽度シフトする変位を認めた.固定法3を施行した40例のうち2例(23歳,26歳)で,また固定法4を施行した21例のうち2例(16歳,23歳)で,いずれも術後3〜5日でバーが大きく上方にシフトする変位を認めた.【結論】スタビライザーの装着や3点固定法はバーの固定において代表的な方法であるが,これらを用いてもバーが変位する症例が発生している.幼少児の症例におけるバーの変位は固定法3や固定法4を施行することにより防止できると考えられた.しかし,成人または成人に近い年齢で骨性胸郭が硬くなっている症例では固定法3または固定法4では不十分な場合があり,発生を防止するためには更なる固定法の工夫が必要と考えられた.

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