抄録
症例は3歳4か月の男児.夕食後に突然の腹痛と嘔吐で発症した.腹部単純X線写真にて著明な胃の拡張を認め,腹部造影CT検査で肝下面に遊走した脾臓を認めた.脾臓の造影効果が認められ脾捻転・脾梗塞は否定された.胃管の挿入により腹痛は消失し,腹部超音波検査で脾臓は左側腹部に整復され血流に異常のないことが確認された.以上より遊走脾に起因した胃軸捻と診断し,待機的に腹腔鏡下脾固定・胃固定術を行った.脾固定は腹腔鏡下にretroperitoneal pouch法に従ってポケットを作成しこの中に脾臓を収容した.腹膜外腔ポケットの作成にはバルーン拡張器を用いず,また用手的操作を行わずに完全に腹腔内から腹腔鏡操作で行った.胃底部と前壁を腹壁に縫合して胃固定を行った.脾固定法にはさまざまな報告があるが,後腹膜拡張バルーンや吸収性メッシュを使用しない我々の方法は,体格の小さな小児に対する脾固定法として簡潔で安全な方法である.