抄録
【目的】長期の静脈栄養や化学療法が必要な患児に皮下埋め込み型中心静脈カテーテルポート(CVAP)が使用され,その挿入術の成否とカテーテル管理は原疾患の治療成績をも左右する.そこで当科で挿入したCVAPを検討した.【方法】83人延べ98例の患児にCVAPを留置した.手術時年齢は4.9±4.2歳(4か月〜18.9歳),悪性疾患は74例であった.手術時体重,挿入方法,手術時間,挿入難渋例(手術時間が平均+標準偏差以上,ガイドワイヤまたは造影剤を用いた症例,挿入血管を変更した症例),留置期間,手術合併症,晩期合併症,抜去理由を検討した.悪性疾患では術前の化学療法と骨髄抑制の影響を検討し,良性疾患と比較した.【結果】体重は16.8±10.2kg(94例:6.1〜57.4 kg),挿入方法は静脈切開法87,同じ血管からの入換え5,鎖骨下静脈穿刺法5,タバコ縫合法1例であった.手術時間は50±18分(81例),23例で挿入に難渋し,2例で中心静脈に留置できなかった.留置期間は594±432日(86例),手術合併症(6例)は術後出血,静脈炎,創部裂傷,ポート感染,液漏れ,晩期合併症(18例)は閉塞,カテーテル感染,液漏れ,静脈炎,皮膚壊死であった.抜去理由(83例)は治療完了41,死亡19,入換え5,閉塞9,感染3,液漏れ2,皮膚壊死2,ポート破損1,不明1例であった.悪性疾患のうち,術前の経過が検討できた66例では20例で術前10日以内に化学療法が行われ,28例は有害事象grade 4の骨髄抑制を有していた.しかし手術合併症発生率,留置期間は良性疾患と有意差を認めなかった.【結論】23.5%で挿入に難渋したが98.0%でカテーテルを中心静脈に留置できた.乳児や骨髄抑制を伴う患児でも比較的安全に挿入でき,手術成績は概ね良好であった.予定外の抜去を防ぐには留置中の閉塞,ポートおよびカテーテル感染に留意すべきである.