日本小児外科学会雑誌
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原著
小児悪性腫瘍に対する腫瘍生検術の有用性と問題点
堀池 正樹大野 耕一中村 哲郎東 孝中岡 達雄高間 勇一東尾 篤史
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2013 年 49 巻 6 号 p. 1087-1090

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抄録
【目的】小児がんの集学的治療では正確な病理診断が必須であり,腫瘍生検術後迅速に化学療法を開始する必要がある.そこで当科で行った悪性腫瘍生検術を後方視的に検討した.
【方法】生検術を行った悪性疾患61 例(男/女:31/30,4.9±5.0 歳)を対象とした.疾患は神経芽腫25 例,悪性リンパ腫12 例,腎芽腫5 例,横紋筋肉腫5 例,肝芽腫1 例,その他13 例であった.手術時間,出血量,到達法,生検病巣,手術合併症,生検病理診断と最終病理診断の一致性,生検術から化学療法までの期間を検討した.
【結果】手術時間は124±41 分,出血量は36±50 g であり1 例で輸血を要した.平均+SD 以上出血した8 例は腫瘍の脆弱性,複数個所の生検,長時間の剥離操作が出血の原因であった.到達法は開腹生検42 例,開胸生検2 例,体表リンパ節生検11 例,その他6 例であり,生検病巣は主病巣52 例,転移巣9 例であった.全例で手術合併症は認めなかった.生検術後に腫瘍摘出術を行った38 例では生検病理診断と最終病理診断は全て一致していた.生検術から化学療法までの期間は5.6±4.4 日であり,平均+SD 以上かかった症例は6 例であった.その理由はRS ウイルス感染1 例,インフルエンザ罹患児との接触1 例,血液腫瘍科転科後の計画4 例であった.
【結論】腫瘍生検術で1 例のみ輸血を要したが手術合併症はなく,外科的理由による化学療法の遅延もなかった.生検病理診断と最終病理診断は全て一致しており摘出標本は適切であった.全身状態不良のため開腹または開胸生検術が難しい症例では,転移巣からの生検でも正確な病理診断が可能と思われた.
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