【目的】先天性食道閉鎖症(以下 EA)根治術後に吻合部の安静を保つため,鎮静薬や筋弛緩薬を用い一定期間の人工呼吸管理を行うことは広く行われている.元来吻合部の緊張が強い症例に限られていたこの管理法を標準的な Gross C 型食道閉鎖症(以下 C 型 EA)術後にも行う必要があるのかどうかを検討した.
【方法】2005年4月から2011年12月までに4施設で根治術を施行したEA症例41例から,複雑心奇形合併例・1,500 g 未満の症例・一期的吻合不能のlong gap 症例を除外したC 型EA 症例を対象とした.対象を術後の鎮静なし(I 群)と,術後の鎮静あり(II 群)とに分類,両群間で術後経過,合併症を比較した.
【結果】症例は21例(I 群10例,II 群11例)であった.術後の挿管期間とドレーン留置期間はII 群で有意に長かった.経口摂取開始日,術後入院期間は両群間で有意差は認めなかった.術後合併症は,吻合不全は I 群1例(10%),II 群0例(0%).吻合部狭窄は I 群1例(10%),II 群3例(27.2%),気管食道瘻の再発は I 群0例(0%),II 群1例(9.1%)でありいずれも有意差はなかった.また,鎮静,筋弛緩管理が関与する可能性のある合併症であるが,褥瘡は有意差はなかったが II 群のみで1例(9.1%)認め,術後無気肺は I 群1例(10%),II 群6例(54.5%)と II 群で有意に多かった.
【結論】今回の検討では標準的な C 型 EA の術後の一定期間の深い鎮静もしくは筋弛緩下の人工呼管理の有効性は確認できなかった.術後の深い鎮静や筋弛緩は他の合併症の原因となる可能性もあり,症例を選択して行うべきと考えられた.
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