抄録
完全母乳栄養中に発症する新生児・乳児消化管アレルギー症例は少なく,その詳細はあまり知られていない.症例は日齢7 から生後3 か月までの乳児4 人で,いずれも診断前在宅時には完全母乳栄養であった.無呼吸発作,嘔吐,腹部膨満,便秘や血便でアレルギーを発症した.母乳の薬剤誘発性リンパ球刺激試験では全例陽性であった.アレルギー診断後は普通またはアレルギー用人工乳を主に摂取させ,母乳は少量摂取から再開させた.以後症状は再燃せず卒乳となった.本症は多彩な症状を呈するため診断に難渋することがあるが,機能的腸閉塞や血便,無呼吸発作を生じた完全母乳栄養児に対しては新生児・乳児消化管アレルギーを考慮に入れて診断を行うべきである.またその診断にはリンパ球刺激試験が参考になると考えられた.