日本小児外科学会雑誌
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50 巻, 6 号
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おしらせ
プログラム
追悼文
原著
  • ―特にCCAM との関連性について―
    小森 広嗣, 東間 未来, 下島 直樹, 山本 裕輝, 緒方 さつき, 狩野 元宏, 石立 誠人, 宮川 知士, 福澤 龍二, 廣部 誠一
    2014 年 50 巻 6 号 p. 999-1004
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
    【目的】先天性囊胞状腺腫様肺形成異常(以下CCAM)は,肺実質内に見られる発育異常であり,気管支閉鎖症(以下BA)に関連して発生するという考え方は広く認識されてきている.当院のBA 症例に見られた囊胞性病変の病理学的検討を行い,BA とCCAM の因果関係についての追試検証を行った.
    【方法】1971 年から2012 年までに,当院で経験したBA 38 例を対象として以下の解析を行った.気管支の閉鎖は,気管支造影または実体顕微鏡を用いて検索した.囊胞性病変および肺実質の変化について,病理組織学的に検討した.BA とCCAM の関連を確かめる対照として,同研究期間で経験した13 例のCCAM 単独症例も検討に加えた.
    【結果】BA 38 例中18 例(47%)にCCAM を認めた.一方,CCAM 全体31 例中18 例(58%)にBA を認めた.組織学的には気管支閉鎖部近傍に粘液の貯留性囊胞が形成され,さらに末梢にはCCAM が見られた.CCAM 周囲には肺胞の気腫性変化を認めた.CCAM 合併を認めなかった20 例では,気管支閉鎖部近傍の貯留性囊胞および閉塞性肺炎の所見を認めた.
    【結論】BA 症例において気管支閉鎖部の末梢領域にCCAM を約半数に認めた.一方,CCAM 全体から見ても,同様に,BA とCCAM の発生の関連性が支持された.BA におけるCCAM 合併の有無は,胎生期の気道閉鎖に基づいた一連の変化(シークエンス)として起きるとする病因論によって説明できると考えられる.
  • 今治 玲助, 加藤 怜子, 橋本 晋太朗, 向井 亘, 佐伯 勇, 秋山 卓士
    2014 年 50 巻 6 号 p. 1005-1010
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
    【目的】胎便関連性腸閉塞症(meconium related ileus,以下MRI)は超低出生体重児(extremely low-birth weight infant,以下ELBWI)における消化管穿孔の重要な原因の1 つであるが,その手術適応,時期についてはコンセンサスの得られたものはない.我々は当科で経験したELBWI におけるMRI 症例について検討したので報告する.
    【方法】平成18 年5 月~平成25 年4 月までの全ELBWI 症例は154 例であり,MRI と診断された8 例(男児5 例女児3 例5.2%)を対象とした.胎児発育遅延(fetal growth retardation,以下FGR)を8 例中7 例に認めた.在胎週数は中央値28 週4 日,出生体重は中央値649 g であった.経過,発症時期,手術時期,予後,死亡原因について後方視的に検討した.
    【結果】8 例中3 例は保存的治療により改善した.外科的治療は5 例に行われた.5 例中2 例(40%)が生存し,生存例の手術時日齢は2,3 日,腸管拡張出現から手術までは1,3 日であった.死亡例手術時日齢は3,5,12 日,腸管拡張出現から手術までは2,5,7 日であった.
    【結論】FGR 症例はMRI を発症しやすいこと,早期の外科的介入により予後が改善する可能性が示唆された.今後はFGR を有する場合,早期よりガストログラフィン胃内注入・注腸を開始し,保存的治療で改善しない場合は72 時間以内の外科的治療を考慮する予定である.
  • 渡辺 稔彦, 大野 通暢, 佐藤 かおり, 髙橋 正貴, 渕本 康史, 金森 豊
    2014 年 50 巻 6 号 p. 1011-1016
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
    【目的】先天性横隔膜ヘルニア(CDH)は,gentle ventilation の普及により治療成績は向上したが,重症のCDH はいまだ救命できない症例が少なくない.これまでの当センターの治療成績と,特に重症CDH の現状について調査した.
    【方法】2006 年1 月から2012 年12 月までに,当センターにて治療を行ったCDH 61 例のうち,出生前診断されたisolated CDH 52 例を対象とした.肝脱出の有無と胃の位置から3 群に分類し(北野分類),後方視的に検討した.
    【結果】患者分布は48%が北野分類Group I,次いで29%がGroup III,23%がGroup II であった.肺低形成の指標はL/T 比,o/e LHR ともに,北野分類の重症度と有意差が認められた.肺高血圧治療に要したNO の投与期間は各グループ間で差がなかったが,人工呼吸管理,酸素投与,入院期間では,Group I とGroup II,あるいはGroup III との間で有意な治療期間の延長を認めた.手術不能例,パッチ必要率ともに重症度が高くなるにつれ有意にその割合は高くなった.全体の生存率は80.8%,Group III の生存率,合併症なき退院の割合はそれぞれ53.3%,40.0%であった.
    【結論】北野分類Group III の生命予後は不良であった.Group II・Group III では,人工呼吸管理や酸素投与など肺高血圧の治療プロセスにおいても機能予後に重症度の差が見られた.Group III は救命率が低く生存した症例でも後遺症の合併率が高頻度であるため,生命予後・機能予後の改善を目的とした胎児治療を考慮する必要がある.
  • 濟陽 寛子, 連 利博, 矢内 俊裕, 松田 諭, 川上 肇, 平井 みさ子, 藤木 豊
    2014 年 50 巻 6 号 p. 1017-1021
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
    【目的】10 年に1 度の母子手帳の改正が平成24 年に行われ,便色カラーカードが全国の自治体に配布されるようになった.当施設の所在する地域では,平成13 年よりカラーカードの配布に取り組み,1 か月健診での判定を行ってきたが,明らかな効果は得られなかった.カラーカード法を用いてより効果的なスクリーニングを行う一助として,携帯電話のメールを利用した判定法を試行したので報告する.
    【方法】併設する周産期施設で出産する母親を対象に,産前に資料を配布した.児の生後2 週目以降に,母親が任意で便とカラーカードを並べて写真を撮り,指定するメールアドレスに携帯電話のメールで添付送信するよう指示し,送られた添付写真を用いて便色の判定を行った.また,出産を控えた両親学級において,胆道閉鎖症とカラーカード,携帯メールと写真,本法についての感想などのアンケート調査を行った.
    【結果】8 か月間で300 人に資料配布を行い,延べ32 人から便の写真を受信した.受信した写真は解像度,色調の比較において問題なく,判定に苦慮することはなかった.また,アンケート調査(n=113)では胆道閉鎖症,カラーカードについて知っていたのは各々21%,40%であった.尚,80%に携帯電話のメールで写真を送る習慣があり,75%に本法に対し好意的な意見が得られた.
    【結論】従来の方法では1 か月健診以前に便色の異常(灰白色便)により受診する例は稀で,黄色から灰白色便へと移行する便の色調の変化に気付かれにくいという欠点があった.また,便色の変化のみで度々受診をすることは,双方にとって労力がかかると考えられる.母親世代ではカメラ付き携帯電話で写真を撮ることは日常的となっており,本法の操作は簡便で受け入れやすい手段と考えられる.
  • 安井 良僚, 河野 美幸, 城之前 翼, 桑原 強, 高橋 貞佳, 押切 貴博
    2014 年 50 巻 6 号 p. 1022-1028
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
    【目的】経肛門的ヒルシュスプルング病根治術後に溢流性以外の便失禁を認める症例に対し肛門管形成手術を行い,その排便機能における効果を検討した.
    【方法】手術は大見らが報告した成人の内肛門括約筋後方形成手術に準じて行った.乳児期までに経肛門的Soave 法を行い,術後5 年以上経過して重度の溢流性以外の便失禁を認める症例を手術適応とした.術前後の排便機能を直腸肛門奇形研究会による臨床スコア(試案),注腸造影そして肛門内圧検査により評価した.
    【結果】教室で経肛門的Soave 法施行後の31 例中7 例(22.5%)が対象となった.男児6 例,女児1 例で年齢は10.5±2.4 歳,3 例がlong segment aganglionosis,2 例がrectosigmoid aganglionosis,2 例がshort segment aganglionosis であった.排便スコアは,術前1.42±0.4(全例Poor)であったが,術後4.7±2.3(Good 2 例,Fair 4 例,Poor 1 例)と有意に上昇した(p<0.05).なかでも便意に異常がなかった症例では極めて良好な効果が得られた.術前に注腸造影を行った5 例で全例造影剤の直腸内保持が不可能であったが,術後いずれも造影剤の直腸内保持が可能となった.術前の肛門管最大静止圧は26.8±10.7 mmHg であったが,術直後は有意に上昇した(84.9±27.9 mmHg,p<0.05)が,術後2 か月以後に再度測定した6 例では徐々に低下し,術前と有意差はなかった(37.3±14.6 mmHg,p=0.08).
    【結論】経肛門的ヒルシュスプルング病術後の溢流性以外の便失禁に対し,本術式が有用であると考えられた.今後も長期的な排便機能のフォローアップを行う必要がある.
症例報告
  • 深見 絵里子, 中原 さおり, 石田 和夫
    2014 年 50 巻 6 号 p. 1029-1032
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
    膀胱ヘルニア(以下本症)は,膀胱の一部が腹壁もしくは骨盤部の正常または異所性の開口部から脱出することによって起こる疾患である.本症の報告例のほとんどが高齢の男性であり小児膀胱ヘルニアの報告は稀である.今回陰茎の浮腫,屈曲という特異な症状で発症し,超音波検査,膀胱造影にて本症と診断した1 例を経験した.症例は680 g で出生した超低出生体重児の男児.日齢105 に陰茎の浮腫,屈曲に気づかれ当科にコンサルトされた.超音波検査にて,両側鼠径部に膀胱の一部が脱出するのが確認された.膀胱造影でも同様の所見であり本症と診断した.児は肺高血圧を合併しておりその改善をまって手術の方針とした.経過観察中に嵌頓や排尿障害を起こすことなく1 歳8 か月に両側根治術を施行した.術後経過は良好である.
  • 久松 千恵子, 大片 祐一, 西島 栄治
    2014 年 50 巻 6 号 p. 1033-1038
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
    完全母乳栄養中に発症する新生児・乳児消化管アレルギー症例は少なく,その詳細はあまり知られていない.症例は日齢7 から生後3 か月までの乳児4 人で,いずれも診断前在宅時には完全母乳栄養であった.無呼吸発作,嘔吐,腹部膨満,便秘や血便でアレルギーを発症した.母乳の薬剤誘発性リンパ球刺激試験では全例陽性であった.アレルギー診断後は普通またはアレルギー用人工乳を主に摂取させ,母乳は少量摂取から再開させた.以後症状は再燃せず卒乳となった.本症は多彩な症状を呈するため診断に難渋することがあるが,機能的腸閉塞や血便,無呼吸発作を生じた完全母乳栄養児に対しては新生児・乳児消化管アレルギーを考慮に入れて診断を行うべきである.またその診断にはリンパ球刺激試験が参考になると考えられた.
  • 髙尾 智也
    2014 年 50 巻 6 号 p. 1039-1042
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
    症例は14 歳女児.繰り返す意識消失発作で救急搬送された.受診時の血糖値は34 mg/dl で,ブドウ糖点滴にて意識障害は改善した.腹部造影CT 検査で強く造影される腫瘤を膵頭部に認め,インスリノーマと診断された.血糖値のコントロールを行い,膵頭部インスリノーマに対して腹腔鏡下腫瘍核出術を施行した.術後経過は良好で,低血糖の症状はすぐに消失し,術後9 日目に退院した.術後16 か月経過し,低血糖症状の再発は認めていない.近年,腹腔鏡下手術が普及し様々な疾患に汎用されている.本術式は適切な術前評価とデバイスの工夫により小児においても術式の選択肢と成り得る.
  • 竜田 恭介, 山内 健, 白井 剛, 有馬 透, 孝橋 賢一
    2014 年 50 巻 6 号 p. 1043-1047
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
    症例は10 生日の男児,38 週1 日,出生体重3,242 g で出生したが,4 生日より発熱,哺乳低下を認め,前医にて敗血症性DIC(播種性血管内凝固症候群)と診断され治療が行われた.しかし検査所見の改善は乏しく,翌日より腹部膨満胆汁性嘔吐を認めるようになり,10 生日の単純CT 検査にて門脈内ガス像を認めたため,壊死性腸炎を疑われ当院に転院となった.腹部超音波検査,造影CT 検査にて回盲部から上行結腸に及ぶ血流の豊富な腫瘤を認め,腸管の血管腫によるKasabach-Merritt 症候群と診断し,13 生日に手術を行った.手術所見では回腸末端から上行結腸を全周性に置換する暗赤色の腫瘤を認め,内側は後腹膜にも及んでいたが,右半結腸切除術により腫瘍は全摘可能であった.病理組織検査によりカポジ肉腫様血管内皮腫と診断された.術後は,速やかに血小板は正常化して術後20 日目に退院した.術後1 年目の造影CT 検査では腫瘍の再発は認めていない.
  • 鈴木 啓介, 古村 眞, 寺脇 幹, 小高 哲郎, 佐竹 亮介, 池袋 賢一, 米川 浩伸, 菊地 淳, 佐々木 惇, 川嶋 寛
    2014 年 50 巻 6 号 p. 1048-1052
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
    症例は9 歳男児.3 か月前より全身倦怠感を自覚し近医で貧血を指摘された.画像診断にて小腸重積を疑ったが,イレウス所見がないことから腹腔内腫瘍も否定できず腹腔鏡補助下に手術を 施行した.Treitz 靭帯より約60 cm の空腸に小腸重積を認め小腸部分切除を行った.先進部に2 cm 大のIsp ポリープを認め組織学的にPeutz-Jeghers 症候群で見られるポリープと同様の過誤腫であった.術後の上下部内視鏡検査および小腸造影では他にポリープは認めず,皮膚・粘膜の色素沈着や遺伝性のないPeutz-Jeghers 型ポリープと診断した.小児のPeutz-Jeghers 型ポリープの報告は稀であり,腹腔鏡補助下の手術は自験例が本邦初である.Peutz-Jeghers 型ポリープは腸重積症で発症することが多いが,腸管の重積が不完全な場合にはイレウスを呈しないこともあり,その場合は腹腔鏡による診断治療が有用と言える.
  • 内田 雄一郎, 佐野 薫, 嶋田 圭太
    2014 年 50 巻 6 号 p. 1053-1056
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
    停留精巣に発生する腫瘍は幼小児期には稀で,胎児期の報告例は非常に少ない.われわれは,胎児超音波検査で指摘された腹部腫瘤を契機に診断された腹腔内停留精巣発生の奇形腫を経験したので,文献考察を含めて報告する.症例は日齢6 男児で,在胎8 か月時の超音波検査で腹部腫瘤を指摘された.出生後のMRI 検査では,左側腹部に36 mm 大の囊胞性病変を認め,内部に一部脂肪成分を含む充実部分があり,奇形腫を疑った.また左陰囊内に精巣を触知せず,左停留精巣と診断した.腹腔内停留精巣に発生した奇形腫と考えて生後2 か月時に手術を行った.腫瘍を含めた左高位除睾術を施行し,術後病理検査では骨,脂肪,毛髪などが混在した成熟奇形腫の組織像を認め,腫瘍の辺縁には精巣網,精巣上体の構造も認めることから,腹腔内停留精巣に発生した成熟奇形腫と診断した.術後再発徴候認めず,現在外来で経過観察中である.
  • 中原 康雄, 岩村 喜信, 新居 章, 浅井 武, 上野 悠
    2014 年 50 巻 6 号 p. 1057-1060
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
    症例は日齢2,男児.Gross C 型先天性食道閉鎖症と診断し,根治手術を施行した.術前の胸部X 線検査では上部食道が気管分岐部よりもやや尾側まで存在,気管支鏡検査では気管食道瘻(TEF)が気管分岐部より2 cm 近く頭側に存在することが確認できた.根治手術時に食道を露出すると食道はcaliber change を認めるものの連続しており,一見閉鎖はないように見えた.上部食道と下部食道が約2.5 cm にわたって重複しておりTEF は高い位置に存在していた.本症例はKluth V6 型に相当する.稀なタイプであるが術前に気管支鏡検査でTEF の位置を把握し,フォガティーカテーテルを挿入していたことが解剖学的状況把握に有用であった.またKluth の分類にあるようなさまざまな特殊型が存在することを知識として知っておくことは術前・術中の治療戦略の決定に重要であると考えられた.
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