抄録
【目的】新生児-乳児消化管アレルギーは嘔吐・血便などの消化器症状を呈することが多いが,特異的症状がないため診断が難しく治療も難渋することが多い.特に原疾患に消化器外科疾患を有する患児では原疾患との鑑別が問題となる.当院で経験した症例の診断や治療の問題点を検討した.
【方法】最終的に新生児-乳児消化管アレルギーと診断された5 年間に経験した外科疾患を有する自験の6 例における診療録をもととした後方視的調査研究.
【結果】男児4 例,女児2 例.超低出生体重児が2 例,他の4 例は満期産児であった.併存外科疾患(重複あり)は,消化器外科疾患が4 例,先天性心疾患が3 例,腹壁形成異常が1 例であった.消化管アレルギーの診断時期は生後1 か月半から1 歳3 か月時まで,発症時症状(重複あり)は血便3 例,水様便2 例,嘔吐1 例,活気不良1 例,体重増加不良6 例であった.診断根拠とした検査結果(重複あり)は,ALST 陽性が6 例,経腸栄養剤に対するDLST 強陽性が2 例,便中好酸球陽性が2 例,腸粘膜生検での好酸球浸潤の証明が1 例であった.治療は,全例食餌アレルゲン除去と低アレルゲンミルクによる栄養管理で消化器症状は消失している.
【結論】今回の検討例では,新生児期の最初の経腸栄養では症状発現がなく外科的介入やそれに伴う抗生剤の使用などが消化管免疫に影響を及ぼし,乳児期以降の発症につながった可能性がある.また,消化器外科疾患合併の2 例は,retrospective には診断以前の症状もアレルギー症状であった可能性があり,消化管アレルギーを疑う姿勢が重要である.