日本小児外科学会雑誌
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原著
小児胃軸捻転症に対する腹腔鏡下胃前方固定術についての検討
佐藤 智行天江 新太郎和田 基佐々木 英之風間 理郎福澤 太一工藤 博典田中 拡中村 恵美仁尾 正記
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2015 年 51 巻 4 号 p. 787-792

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抄録
【目的】胃軸捻転症は胃の一部ないし全てが生理的範囲を越えて回転,捻転することによって発症し,急性発症例や再発を繰り返す症例では手術加療が必要である.われわれが行っている胃軸捻転症に対する腹腔鏡下胃前壁前方腹壁3 点固定術(以下,本法)の有用性について検討した.
【方法】東北大学病院と宮城県立こども病院で2000 年12 月から2013 年12 月までの13 年間に本法を行った胃軸捻転症6 例(男4 名,女2 名)を後方視的に検討解析した.
【結果】本法を施行した6 例の平均月齢は91.8±35.8 か月(3 歳5 か月~11 歳5 か月)であった.全例とも特発性であったが,5 例で成長発育障害を認め,4 例は精神運動発達遅延を有していた.ヒルシュスプルング病,気管支肺前腸奇形合併例が1 例ずつみられた.5 例が急性発症例であったが,胃管による減圧が可能で全例待機的に手術を施行し得た.6 症例の平均手術時間は123.3 分で,胃前方固定操作に要した時間は平均96.7 分(60~123 分)であった.術中出血量は全例少量であり,1 例で軽度の低ナトリウム血症と発熱が見られたが,術後に重大な合併症は見られなかった.術後平均5.3 日で経腸栄養(経口ないし経管)を再開することができた.全症例の平均観察期間は,46.8±18.8 か月間(2 年0 か月~6 年7 か月)で経過観察中に胃軸捻転の再発は見られなかった.
【結論】急性発症例でも胃管で減圧が可能であれば,待機的に手術を行うことが可能である.脾,横隔膜等の合併疾患を有しない症例であれば,本法が有用であると考えられた.
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