2015 年 51 巻 6 号 p. 1042-1047
【目的】当科では小児急性虫垂炎に対し,保存的治療を第一選択としている.今回,我々の治療経験から小児急性虫垂炎に対する保存的治療の適応および限界について検討した.
【方法】2012 年1 月から2014 年8 月までに急性虫垂炎の診断で入院し抗菌薬を用いた保存的治療を行った53 症例を対象とし,保存的治療奏効群と保存的治療抵抗群に分けて比較検討した.
【結果】53 例中,奏効群は36 例,抵抗群は17 例.入院時体温は奏効群が37.4±0.7°C,抵抗群が38.2±0.8°C で抵抗群において高かった(p=0.01).入院時血液検査所見では,CRP が奏効群1.4±1.7 mg/dl,抵抗群9.7±7.0 mg/dl と,抵抗群で高値であった(p<0.01).画像所見では,虫垂最大径が奏効群8.4±2.7 mm,抵抗群11.3±2.5 mm と抵抗群で有意に腫大していた(p<0.01).糞石は奏効群の16.7%(6/36 例),抵抗群の76.5%(13/17 例)に認めていた(p<0.01).治療開始後24 から48 時間での白血球数は奏効群6,988.9±2,884.8/μl,抵抗群11,741.2±3,845/μl と,抵抗群で高値であった(p<0.01).再発率は奏効群8.3%に対し,抵抗群では36.4%と高率であった(p=0.042).治療開始から48 時間での2 群のカットオフ値は,白血球数9,650.0/μl,CRP 値が6.67 mg/dl と推定された.
【結論】治療後48 時間において白血球数が9,650.0/μl またはCRP 値が6.67 mg/dl を超える症例では早期の外科治療を検討すべきである.