2015 年 51 巻 6 号 p. 1093-1099
機能性ディスペスシアに対し漢方療法を施行し,胃運動機能の観点からその有効性が認められた1 例を経験した.症例は5 歳男児.急性胃腸炎症状軽快後より腹部膨満,心窩部痛,嘔吐を認め近医を受診した.約50 日間摂取後の嘔吐が続き,発症前より3.6 kg の体重減少を認めた.上部消化管内視鏡検査では軽度の胃炎が認められ,画像検査では器質的疾患は認められず,感染性胃腸炎を契機とした機能性ディスペスシアと診断した.胃運動機能検査では13C 酢酸および13C オクタン酸呼気胃排出機能検査,胃電図検査を用いて評価した.入院後アコチアミドとH2 ブロッカーにて治療を開始したが,薬剤性肝機能障害を認め,六君子湯に変更した.内服開始後も水分摂取にて上腹部膨満が認められたため茯苓飲合半夏厚朴湯を追加した.症状改善し固形食摂取可能となった.4 か月間の内服治療により正常な胃排出機能が確認され廃薬とし,廃薬後も経過良好である.