抄録
【目的】小児の直腸脱は小児診療でときに見られる疾患であるが,保存的治療で軽快が期待できるため,手術が必要な症例は多くない.当院で経験した直腸脱について検討したところ,注腸造影検査で特徴的な所見を認め,治療成績によって差異を認めたので報告する.
【方法】2005 年1 月から2014 年12 月までに,直腸脱を主訴として当院を受診した18 例を対象とした.発症年齢,初診年齢,随伴症状,注腸造影検査所見,治療内容と成績,合併症と経過について後方視的に調べた.
【結果】発症年齢の中央値は3.4 歳,初診年齢の中央値は5.0 歳であった.初診時に6 例に便秘,9 例に排便時のいきみ,3 例に肉眼的血便を認めた.注腸造影検査で,全症例に直腸が仙骨から離れて前方に落ち込む所見を認め,これを直腸の仙骨への固定不良とした.8 例が保存的治療で改善し,9 例が保存的治療では改善が見られず,腹腔鏡下直腸固定術を施行し,全例で直腸脱が消失した.1 例は手術予定として待機中である.発症年齢,初診年齢,便秘,いきみ,血便の有無について手術症例と非手術症例で統計学的有意差は認められなかった.固定不良は,保存的に治癒した症例では第1 仙椎までであったが,手術症例では第2 もしくは第3 仙椎まで及んでいた.保存的に治癒した症例,手術症例とも,現在再発を認めていない.
【結論】当院を受診した直腸脱の全例に,直腸の仙骨への固定不良が認められ,直腸脱の原因のひとつであると考えられた.また,その程度によって保存的治療への反応性が異なった.直腸固定術はこの解剖学的異常を修復できる術式であり,再発率も低く有効な治療法であるといえる.