日本小児外科学会雑誌
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原著
顕在性二分脊椎に対する微温湯を使用した洗腸による排便調整の経験
奥山 直樹
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2017 年 53 巻 1 号 p. 43-48

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抄録

【目的】顕在性二分脊椎症例に対して微温湯による洗腸の有用性について検討した.

【方法】対象は2004 年から2013 年の間に洗腸による排便管理を行った顕在性二分脊椎の患児12 例とした.洗腸開始年齢は平均9 歳4 か月(4 歳4 か月~14 歳3 か月)であった.方法は,洗腸器はConvaTec のバリケア新洗腸器®(ストマコーン付)を用い,洗腸器を直接肛門に当て微温湯を平均800 ml(300~1,500 ml)大腸内に注入した.更に自己導尿ができていること,洗腸を1 年以上継続できていることを条件に自己洗腸を勧めてみた.

【結果】顕在性二分脊椎で排便調整を依頼された12 例の全例に直腸肛門内圧検査を施行した.全例が直腸肛門反射陽性で,肛門管圧は平均33.4±11.1 mmHg と正常範囲内であった.洗腸の同意を得た12 例に洗腸を開始し,10 例が継続できた.継続できた10 例のうち学校での便失禁は8/10 例において消失し,下着汚染は6/10 例で消失した.合併症は女児の1 例で粘血便を認めたが, 微温湯を生理食塩水に変更,注入量を減らして洗腸を継続し粘血便は認めなくなった.2 例が離脱した.自己洗腸を10 例に試みたが,下肢麻痺のない2 例が部分的に成功したものの自己導尿とは全く異なり実際の手技が困難で,現実的に自己洗腸は困難であった.

【結論】顕在性二分脊椎の排便障害に対して微温湯を使用した洗腸を施行し,学校など公共の場での便失禁や下着汚染を少なくする結果となった.一方で,洗腸に一定の時間が掛かり,家族による介助が必須であるなど,本人と家族に掛かる負担が大きいことが分かった.

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