日本小児外科学会雑誌
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原著
小児鼠径ヘルニアに対する手術術式の検討
―腹腔鏡下手術(LPEC)と従来法の比較―
木村 俊郎須貝 道博石戸 圭之輔小林 完齋藤 傑鍵谷 卓司吉田 達哉佐藤 健太郎袴田 健一
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キーワード: 小児鼠径ヘルニア, LPEC, CPPV
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2017 年 53 巻 4 号 p. 905-910

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抄録

【目的】近年,腹腔鏡下ヘルニア修復術(以下LPEC:laparoscopic percutaneous extraperitoneal closure)は多くの施設で採用されており,当科では2007年より同術式を採用し,小児鼠径ヘルニアの標準術式としている.過去8年間のLPEC施行例とPotts法施行例を後方視的に評価し,LPECの安全性および有益性を検討した.

【方法】2002年1月から2015年12月までに当科で,小児鼠径ヘルニアに対して手術を施行した792例を対象とした.このうち2007年6月から導入したLPECを施行した400例をL群,Potts法を施行した392例をP群とし,両群の手術所見および合併症発生率を比較検討した.

【結果】平均手術時間は片側の場合,L群で45.8分,P群で41.4分でありL群が有意に長かった.一方両側の場合は,L群で54.8分,P群で83.2分でありL群が有意に短かった.L群で術前に片側鼠径ヘルニアと診断された362例中125例(34.5%)が,術中所見で対側腹膜鞘状突起開存(CPPV)陽性の診断となりLPECが追加で施行された.対側発症はL群で片側237例中4例(1.7%),P群で片側367例中38例(10.4%)であり,L群で術後対側発症率が有意に低いことが明らかとなった.再発はL群で400例中4例(1%),P群で392例中8例(2%)であり,両群で再発率は同等であった.

【結論】LPECは術中・術後合併症率がPotts法と変わりなく低く,両側鼠径ヘルニアの手術時間短縮や,術後対側発症率低下を実現できることから,LPECの安全性および有益性は非常に高いと考えられた.

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