日本小児外科学会雑誌
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原著
当科における腸回転異常症の新生児乳児例と年長児例の比較検討
竜田 恭介石本 健太古澤 敬子古賀 義法財前 善雄
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2017 年 53 巻 5 号 p. 1004-1008

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抄録

【目的】当科において経験した腸回転異常症(以下本症)の新生児・乳児例と年長児例について比較検討し,年長児における本症の特徴,留意点について明らかにする.

【方法】1990年1月~2015年12月において当科で治療を行った本症について後方視的調査を行った.1歳未満の新生児・乳児群(以下A群)と1歳以上の年長児群(以下B群)にわけ,背景因子,病悩期間,症状,中腸軸捻転,手術,術後合併症について比較検討した.

【結果】対象は45例で,A群38例,B群7例であった.背景因子について有意差を認めたのは,B群で出生体重が有意に大きいことのみであった.症状は,A群では胆汁性の嘔吐と胃管排液が最も多かったのに対し,B群では間歇的腹痛と非胆汁性の嘔吐と胃管排液が多かった.病悩期間はA群では0日~2か月と比較的短期間であったが,B群では急性に発症した1例を除いた6例で3~12年と長期間に及んでいた.中腸軸捻転の頻度,捻転の程度については両群間に有意差は認めなかったが,B群において捻転部位の線維性癒着などの慢性的な捻転を示唆する所見を認めた.術中出血量はB群において有意に多く,更に手術時間もB群において有意に長かった.術後合併症は,両群間に有意差は認めないものの,B群において癒着性イレウスが多い傾向にあった.

【結論】年長児における本症は症状,病悩期間,術中出血量,手術時間,術後合併症などにおいて新生児・乳児期とは異なる特徴を有しており,年長児例の特徴を充分理解して治療に当たる必要がある.また慢性の消化器症状のある年長児例の診察では,このようなことを念頭において検査し,腸回転異常症を見落とさないことが重要である.

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