日本小児外科学会雑誌
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当施設における右先天性横隔膜ヘルニアについての検討
奥村 健児入江 友章山本 裕俊
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2017 年 53 巻 5 号 p. 998-1003

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抄録

【目的】先天性横隔膜ヘルニア(CDH)は,近年の周術期管理の進歩により予後が向上した.しかし,一般に治療成績を論ずる際には左CDHの成績が多分に結果に影響しており右CDHに焦点を当てられることは少ない.今回,当施設で経験したCDH症例について,一般に報告されている予後因子が左右それぞれのCDH症例に該当するかを比較検討し,右CDHの臨床像を研究した.

【方法】2002年から2015年までの間に当施設で経験したCDH 39例を対象とした.これらを左右の発症側ごとに,胎児診断の有無,分娩施設,入院期間,合併症,予後などについて比較検討した.

【結果】発症側は右CDH 7例,左CDH 32例であり,患者背景で有意差がみられたのは肝臓の胸腔内脱出のみであった(右100% vs. 左21.9%;p<0.001).術後合併症として左CDHでは治療を要した胃食道逆流症が5例発症していたが右CDHにおいては認めなかった.生存率は右57.1% vs. 左78.1%(p=0.344)で,左CDHにおいては胎児診断30週未満,出生体重2,500 g未満,肝臓の胸腔内脱出,修復時の人工膜使用が有意に予後に相関していたが右CDHに関しては相関する項目はなかった.

【結論】右CDHに関して,有意差こそないものの左CDHと比較して胎児診断率が低く,予後が不良の傾向がみられた.一方,左CDHで予後と相関が見られた項目は右CDHで同様の所見は認めなかった.右CDHに関しては独立した病態と認識する必要性も考えられた.

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