日本小児外科学会雑誌
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原著
小児特発性腸重積整復後の予後予測因子の検討
―超音波検査による回腸末端の所見―
堀池 正樹大野 耕一
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2017 年 53 巻 7 号 p. 1252-1256

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抄録

【目的】小児特発性腸重積症(以下,本症)は65%以上が非観血的に整復されるが,その中に再発を繰り返す症例を認める.本症の発生には回盲部のリンパ組織が重要であるが,再発の原因は明らかにされていない.そこで整復後に再発した症例(以下,再発群)と再発しなかった症例(以下,非再発群)について回腸末端の腸管壁の厚みを比較,検討することで再発の原因について考察した.

【方法】非観血的整復術を行った特発性腸重積症27例(再発群4例,非再発群23例)を対象とした.まず整復時の性別,先行感染,月齢,体温,白血球数(以下,WBC),CRPを両群間の背景因子として検討した.次に整復後の回腸末端壁の厚み(以下,WTTI)を超音波検査で経時的に測定した.また非再発群のWTTIから単回帰分析を行い,回帰関数を求めた.さらに①整復直後から24時間までのWTTIと②整復後24時間以降のWTTIを両群間で比較,検討した.

【結果】両群の背景因子はいずれも有意差を認めなかった.WTTIは非再発群では急速に減少し約50時間で2 mmに収束すると推測された.回帰関数を用いて収束値2 mmに至る整復後の経過時間を求めたところ55時間であった.一方再発群では緩やかに減少し,およそ6.5 mmに収束していた.また両群のWTTIは整復後24時間以後の測定値についてのみ有意差を認めた.

【結論】本症の再発要因は整復後に回腸末端の腸管壁の肥厚が持続することと関連していると思われた.したがって整復後24時間経過後のWTTIを評価することで本症の再発のリスクを予見することが可能と思われた.

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