2017 年 53 巻 7 号 p. 1257-1263
【目的】当施設で経験した乳児ビタミンK欠乏性出血症を呈した胆道閉鎖症(BA)を検討し,その臨床像を明らかにすることを研究の目的とした.
【方法】当施設で経験したBA 76例を対象とし,ビタミンK欠乏性出血症を呈した9例をA群,ビタミンK欠乏性出血症を呈さなかった67例をB群に分け,入院時日齢,手術時日齢,血液検査,臨床・周術期パラメータ,頭蓋内出血の合併,黄疸消失率,術後10年の自己肝累積生存率について統計学的解析を行った.さらにビタミンK欠乏性出血症を呈した9例については,患者背景や臨床パラメータ,頭蓋内出血の経過や予後の詳細を後方視的に検討した.
【結果】術前血液検査では,両群間で有意差は認めなかった.肝門部空腸吻合術の日齢はA群74日(54~102日),B群48日(7~128日)とA群で有意に遅かった.患者背景,臨床・周術期パラメータは両群間で有意差はなかった.術後の黄疸消失率と術後10年の自己肝累積生存率はA群で有意に低かった.A群を詳細に検討すると,9例中母乳栄養が8例であり,出血症状の発症日齢は中央値60.9日(41~84日)であった.頭蓋内出血は4例に認められ,保存的治療は3例,開頭血腫除去は1例に行われた.生存中の症例には神経学的後遺症を認めていない.
【結論】ビタミンK欠乏性出血症を呈したBA症例は肝門部空腸吻合術の時期が遅く,頭蓋内出血を合併する頻度が高く,長期予後が不良であった.今後,ビタミンK欠乏性出血症や頭蓋内出血を防止するためには,BAの早期発見を行うことが重要と考えられた.