2017 年 53 巻 7 号 p. 1273-1277
症例は男児.胎児期より水頭症を指摘されており,帝王切開にて出生した.性別と身体所見よりX連鎖性遺伝性水頭症(X-linked hydrocephalus; XLH)を疑われ,遺伝子検査にてL1 cell adhesion molecule(L1CAM)遺伝子異常が確認された.水頭症に対してVPシャント術を施行したが,出生後より見られていた腹部膨満が徐々に増悪してきた.L1CAM遺伝子異常を認めることからHirschsprung病(Hirschsprung’s disease; HD)の合併を疑い,注腸造影,直腸肛門内圧検査および直腸粘膜生検にてHDと診断,開腹Soave法を施行して腹部症状の改善を認めた.L1CAM遺伝子変異に起因する疾患は先天性水頭症を含む様々な表現型を呈することが知られているが,近年,HDを合併した報告例が散見される.XLHの患者における腹部膨満や頑固な便秘では,HDの存在を念頭において診療に当たるべきであると思われた.