症例は8歳男児.右下腹部を蹴られ,その頃から右陰囊内に精巣がないことを自覚していたが,特に症状もなく経過していた.受傷15日目に右鼠径部の腫脹・疼痛を認め当科を受診した.右鼠径部は腫脹し圧痛を軽度認めるのみであった.右陰囊内に精巣が認められず,各種検査で右精巣の鼠径部捻転と診断し観血的整復術を施行した.精巣は外鼠径輪で頭側に約180°屈曲し,精巣脱出症による精巣捻転と診断した.精巣壊死を認め精巣摘除術を施行した.精巣脱出症は陰囊底部に正常に下降した精巣が,陰囊外に脱出する比較的稀な疾患である.全身状態が許せれば精巣機能的予後を考慮し可及的速やかに観血的整復を施行するべきである.