特に既往のない5歳男児.発熱と下腹部痛を認め,急性虫垂炎の疑いで当院を紹介受診した.血液検査で炎症反応の上昇を認めたもののCTでは虫垂の腫大はなく,上行結腸の壁肥厚を認めたため急性腸炎の診断で抗菌薬投与を開始した.再度CTを見直したところ渦巻き状を呈する脂肪吸収値腫瘤を認め,特発性大網捻転症と診断した.症状は軽快していたためこのまま保存的治療を継続し,4日目に軽快退院した.大網捻転症は特に小児では比較的稀な疾患であり,過去においては手術治療が原則とされてきたため,保存的治療例の報告は少ない.症状が類似しているため急性虫垂炎などと診断されて手術が行われる例も多いが,近年はCTなどの画像診断技術の進歩により診断が可能な例が増えてきた.大網捻転症の中には保存的治療が可能なものもあり,大網捻転症と診断できた場合は保存的治療も選択肢の一つとして考慮するべきと考えられた.