2018 年 54 巻 6 号 p. 1240-1244
難治性便秘を主訴とし,肛門狭窄をともなう前方肛門と診断した1例を経験した.症例は6歳,女児.肛門の外観は正常であるが,示指の挿入が困難で,anal position indexは0.33であった.直腸後壁は“posterior shelf”様で,電気刺激で肛門は外肛門括約筋により全周性に取り囲まれていることを確認した.以上より肛門狭窄をともなう前方肛門と診断し,全身麻酔下に会陰皮膚の横切開,縦縫合による会陰の延長と,肛門6時の内肛門括約筋切除による肛門形成術を施行した.術後,肛門狭窄は解除され,自力排便を連日,認めるようになった.しかし,会陰の延長効果は限定的であった.内肛門括約筋の病理組織学的検討では,筋萎縮と線維化が認められ,これらが肛門狭窄と難治性便秘に関与している可能性が示唆された.