2020 年 56 巻 6 号 p. 914-920
【目的】小児急性虫垂炎の手術症例で,虫垂に明らかな穿孔を認めないのに腹水の細菌培養が陽性となる症例が存在する.このような症例の術後経過は陰性例と比較して経験的に悪いことが多い.そこでどのような症例で腹水培養が陽性となりまたそれが術後経過にどのような影響を及ぼすのかの検討を行った.
【方法】2015年4月から2018年12月までの間に当科で虫垂切除術を行った急性非穿孔性虫垂炎で,腹水と虫垂内容の細菌培養を行った67例を対象とした.患者背景や術前症状・血液検査値,手術所見,術後経過について培養陰性例と比較し後方視的に検討した.
【結果】腹水細菌培養陽性は15例,陰性は52例であった.年齢および性別,術前嘔吐と下痢の有無,術前有症状期間,術前WBC値,術前CRP値,虫垂径,糞石の有無,虫垂内容細菌培養検出菌種数,合併症数には2群間に差を認めなかった.一方,術後経過では,最高体温(中央値)は陽性例38.8°Cに対して陰性例38.1°C,術後有熱期間(中央値)は陽性例2.0日に対して陰性例1.5日,術後絶食期間(中央値)は陽性例3日に対して陰性例2日,術後入院期間(中央値)は陽性例5日に対して陰性例4日とそれぞれ有意差を認めた.
【結論】非穿孔性虫垂炎のうちどのような症例で腹水細菌培養が陽性となるのか,術前や術中に予測することは困難と考えられた.一方で,陽性例は陰性例と比較して,最高体温が高く,術後有熱期間や術後絶食期間,術後入院期間が長かった.従って非穿孔例でも,腹水の汚染は術後経過に影響することから,腹水中の細菌の有無を調べることは術後の経過観察に有益と考えられた.