日本小児外科学会雑誌
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原著
化膿性リンパ節炎症例の後方視的検討
渡邊 峻松寺 翔太郎谷 有希子山口 岳史荻野 恵中島 政信森田 信司土岡 丘吉原 重美小嶋 一幸
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2022 年 58 巻 4 号 p. 706-711

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抄録

【目的】小児化膿性リンパ節炎は切開排膿で治療しうる疾患であるが,小児外科医からの報告が乏しい.当院の本疾患症例を後方視的に検討した.2008年1月から2020年3月までに,初診時白血球数≧8,000/μl以上かつ画像検査で膿瘍形成を認め化膿性リンパ節炎の診断がついた,初診時年齢15歳以下の症例を対象とした.染色体異常,免疫不全を有する症例は除外した.

【方法】診療録から対象症例の患者背景・検査所見・治療経過を収集した.また,切開排膿群と非切開群の比較検討,膿瘍径と抗菌薬使用期間の相関の検討も行った.

【結果】対象症例は31例で,初診年齢:3.66±2.65歳,性別:男児21例・女児10例,膿瘍形成部位:頸部25例・腋下1例・鼠径部5例/片側25例・両側6例であった.初診時膿瘍径は23.3±7.8 mmで,年齢と初診時膿瘍径に負の相関関係がみられた.また,血中リンパ球数と初診時膿瘍径に相関はなかった.切開排膿は14例に対し行い,切開日は初診日から数えて6.2±5.9日で,培養菌種はMSSA 10例・MRSA 1例,3例は特定できなかった.切開群では非切開群より低年齢で発症し,初発部位が頸部リンパ節以外に多く,リンパ節腫大が起こってから病院を受診するまでの時間も長かった.また初診時に膿瘍径が大きくそのため入院期間が長く,抗菌薬の使用期間も長期に及んでいた.切開群では初診時膿瘍径と抗菌薬使用期間の間に有意な負の相関が認められた.

【結論】小児化膿性リンパ節炎では年齢が低いほど初診時の膿瘍径が大きかった.切開排膿群では膿瘍径が大きいほど抗菌薬使用期間が短かった.これらの結果と今後の研究を踏まえ,的確な抗菌薬の選択と切開時期の判断を行うことが望まれる.

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