2022 年 58 巻 4 号 p. 712-716
先天性気管狭窄症(CTS: congenital tracheal stenosis)の重症例は救命にしばしば難渋するが,これに気管支食道起始症を合併する症例は治療方針に苦慮する.我々は大動脈前方でのスライド気管形成術および右肺切除術を行い救命した症例を経験したので報告する.症例は7か月女児.右肺低形成及びCTSを指摘されており,生後すぐに挿管管理を要した.挿管管理中に急速に進行する換気不全のため,準緊急でスライド気管形成術を施行した.手術所見より右主気管支食道起始症と診断したが,右肺の温存は困難と判断し切除した.スライド気管形成における吻合はpostpneumonectomy syndromeに留意して大動脈の前方で行い,気管の吊り上げを追加した.CTSと気管支食道起始症の合併症例は換気不全による死亡例が多いため,まずはCTSに対する安定した気道確保を行うことが救命のために肝要である.