2024 年 60 巻 2 号 p. 147-152
【目的】急性精巣上体炎は急性陰囊症と総称される疾患の一つで,比較的頻度の高い疾患である.精巣予後が良好な疾患であるが,近年発症後に精巣萎縮を来した報告があり,当施設でも同様の症例を経験した.小児急性精巣上体炎の治療方針について改めて検討すべく,当施設で経験した症例を後方視的に検討したので報告する.
【方法】2008年4月~2022年4月の期間中に急性精巣上体炎と診断され治療を行った77例を対象とし(再発例を除く),年齢,患側,発症から来院までの時間,臨床症状,身体所見,検査所見,治療内容,転帰について診療録を元に後方視的に検討した.
【結果】発症時年齢は1か月~14歳(中央値8歳),患側は右側36例,左側40例,両側1例,発症から受診までの時間は中央値8時間(IQR,5~14.5時間)であった.症状は,陰囊痛75例(97%),陰囊の腫脹44例(57%),発赤28例(36%),腹痛8例(10%),発熱5例(7%)であった.治療後の経過観察は,再診し経過観察をした症例が65例(84%)で,有事再診のみが12例(16%),観察期間の中央値は40日(IQR,7~249日)であった.精巣予後は,治療後1か月以上経過が追えた症例が33例(43%),そのうち精巣萎縮を来した症例を1例認めた.萎縮を来した症例は,経過より,精巣上体炎の波及から精巣炎を来したものと考えられた.
【結論】急性精巣上体炎は精巣予後良好な疾患だが,稀に精巣炎への波及を来し精巣萎縮の原因となる可能性があり,炎症が強い症例は長期的な観察も考慮するべきである.そのために,治療方針や経過観察期間の一定の基準が求められる.