日本小児外科学会雑誌
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原著
当院における小児腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(ヘルニア囊切離と腹膜閉鎖)
―手術手技と成績について―
井口 雅史髙山 勝平金 聖和文野 誠久小野 滋
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2025 年 61 巻 6 号 p. 901-906

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抄録

【目的】小児鼠径ヘルニアの腹腔鏡下修復術において,国外では様々な方法が報告されているが,本邦では嵩原らにより発表された腹腔鏡下経皮的腹膜外閉鎖術(LPEC)が多くの施設で採用されている.当院では2018年より小児腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術において,ヘルニア囊の切離及び腹膜の連続縫合閉鎖(本法)を行っている.本研究ではその技術的な詳細と手術成績について報告する.

【方法】2018年4月から2023年3月までの5年間に本法を施行した107例(男児27人,女児80人)を後方視的に検討した.手術はすべて3 portで行い,全周性にヘルニア囊を切離し,腹膜を連続縫合で閉鎖した.カメラは3 mm直視鏡を用い,working portには3.5 mm portを使用した.

【結果】手術時月齢は9~192か月(中央値67.5か月)で,片側症例が39例(36.5%),両側症例が68例(63.5%)であった.鼠経ヘルニアが100例,6例が陰囊水腫,1例がヌック管水腫であった.平均手術時間(気腹操作時間)は片側症例で47分,両側で67分であった.全例,術中合併症なく腹腔鏡下で完遂した.術前診断が片側鼠径ヘルニアであった97症例において対側の腹膜鞘状突起(PPV)の開存は58.7%(57/97例)に認められた.現時点で同側再発,対側発症は認めていない.術後合併症は1例に術後臍炎を認めた.

【結論】本法においては,ヘルニア囊完全切離による根治性,腹膜閉鎖時に精管・精巣動静脈が剥離されているため巻き込みの心配がない安全性といった利点がある.症例数はまだ少なく,手術時間も改善の余地があるが,根治性と安全性から理に適った術式であると考えており,今後さらなる手技の成熟と症例の蓄積が望まれる.

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