日本小児外科学会雑誌
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症例報告
開腹胃内血腫除去術を行った新生児ビタミンK欠乏性出血症の1例
松田 理奈 仲谷 健吾平山 裕飯沼 泰史
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2025 年 61 巻 6 号 p. 907-912

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抄録

症例は1生日,男児.在胎41週0日に自然分娩で出生した.出生19時間後から吐血し,H2ブロッカーとビタミンK2が投与されたが改善なく当院NICUへ搬送された.顔色蒼白で上腹部膨満による呼吸障害があり,気管挿管し人工呼吸管理を開始した.経鼻胃管から約15 mlの新鮮血が吸引された.血液検査では貧血とPT活性の低下を認め,上部消化管造影検査の所見から胃内大量血腫による切迫胃破裂を疑い,緊急手術を施行した.開腹すると胃壁の色調不良や漿膜損傷はなかったが,胃は大量の凝血塊で緊満していた.凝血塊を除去して胃瘻造設し手術を終了した.臨床経過と術中所見,術後に判明した入院時のPIVKA-II高値を総合し,新生児ビタミンK欠乏性出血症(本症)による新生児メレナと診断した.術後経過は良好で17日目に退院した.本症は一般的に保存的治療で改善するが,本症例のように胃内巨大血腫を伴う場合でも,胃破裂に至る可能性は低いため,全身状態を繰り返し評価し,慎重に治療方針を検討する必要がある.

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