2025 年 61 巻 7 号 p. 1035-1040
症例は14歳女児.脊髄性筋萎縮症1型に対する長期気管切開管理中に反復する誤嚥性肺炎やカニューレ交換困難などを契機に気管食道瘻と診断され,当院へ転院搬送となった.軟性/硬性気管支鏡および上部消化管内視鏡検査にて気管切開孔直下から尾側に4 cmの気管食道瘻を認めた.手術は頸部アプローチ・術野換気にて実施.壊死した気管組織を切除し,食道瘻を修復した後,食道修復部と気管が直接接触しないように舌骨下筋群を介在させて喉頭気管分離術を施行した.経過良好にて術後16日目に前医へ転院となった.良性後天性気管食道瘻は稀な疾患であり,慢性的なチューブやカフによる機械的圧迫が主因とされる.術前に瘻孔の位置・大きさ・気管・食道の状態を十分に評価したうえで,症例に応じた治療方針を検討することが重要であり,喉頭気管分離術が有効な治療選択肢となり得ることが示唆された.