スポーツ理学療法学
Online ISSN : 2758-4356
シンポジウム 1「東京2020大会におけるPTサービスとレガシー」
パラスポーツとスポーツ理学療法
鳥居 昭久
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2021 年 1 巻 Supplement 号 p. S14

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抄録

東京2020パラリンピックが無事終了しましたが、この国家的一大イベントを通して何がレガシーとなったといえるだろうか?今回、私は、パラリンピック日本選手団の JPC本部トレーナーとして参加しましたが、過去のパラリンピックとは大きく違って、国内大会における利点を大いに利用したサポート体制が整備され、新型コロナウイルス感染拡大の影響がある中にも関わらず、選手にとっては大変戦いやすい大会であったと思われました。結果的に獲得メダル総数は51個となり、参加競技数や選手数からの比率からみて、大活躍が注目されたオリンピックの日本代表の成果を上回る結果であったといえます。

今回の大会が、社会の中で障がい者スポーツへの理解を深めるきっかけになったことは間違いありません。東京2020オリンピック・パラリンピックの開催が決まった2013年以降、“パラリンピック”に対する国民の関心は高まり、同時に競技スポーツの一つとしての認知も深まりました。理学療法業界においても、かつて、日本理学療法士協会の生涯学習の専門領域においては、「生活支援」領域にとどまっていた障がい者スポーツが、“スポーツ理学療法”の一つの分野として確立しつつあります。

そもそも、パラリンピックが本当の意味で、オリンピックと同格として扱われて開催されたのは、2008年の北京大会からであり、レクリエーションやリハビリテーションの延長としてだけではなく、競技スポーツとしての地位が確立された歴史が意外に短い中で、今回の東京 2020パラリンピックをきっかけに、我が国においても、スポーツ理学療法の一つであるとして、障がい者スポーツに対する理学療法士の関心が高まり、これに関わる理学療法士が増えつつあることが、一つのレガシーと言えるかもしれません。この 10月に日本障がい者スポーツ協会は、日本パラスポーツ協会へ生まれ変わり、“障がい者のスポーツ”ではなく、もう一つのスポーツの形としての“パラスポーツ”として、さらなる発展を目指しています。スポーツ理学療法もこの“パラスポーツ”に寄与していく時代が来たと言えます。

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© 2021 一般社団法人 日本スポーツ理学療法学会
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