2024 年 2 巻 1 号 p. 7-15
【目的】肩甲骨の運動異常(Scapular Dyskinesis:SDK)を有する野球選手の肩屈曲運動中の肩甲骨運動を評価すること。
【方法】対象は肩挙上・下制時ならびに投球時に肩関節痛のない野球選手51名とした。SDKの評価はSDKを4つのtypeに分類し(type I~IV),type Iを認めた場合は異常群,type IVの場合は正常群とした。測定は肩屈曲動作を実施し,三次元動作解析装置を用いて,肩甲骨と肩関節の角度を算出した。解析区間は,肩屈曲30°~120°位の肩甲骨の上下方回旋,内外旋,前後傾角度を算出した。
【結果】異常群の挙上期30°~90°の肩甲骨の後傾は正常群に比較して,有意に小さかった(p<0.05)。また,異常群の下制期30°~60°の肩甲骨前傾は正常群に比較して,有意に大きかった(p<0.01)。
【結論】SDK type Iを有する無症状の野球選手の肩屈曲動作中の肩甲骨運動の特徴として,挙上期30°~90°の肩甲骨の過小な後傾と下制期30~60°の過剰な前傾運動を呈していることが明らかとなった。