抄録
症例は69歳男性。発熱・腰痛を主訴に近医を受診し, 胸部X線写真で右S^1に5×4cm大の類円形陰影を指摘され, 精査・加療目的で当院を紹介受診した。気管支鏡検査では, 右B^1は腫瘍の壁外から壁内への浸潤のため全周性に狭窄し, 一部に腫瘍が結節状に露出していた。生検により確定診断には至らなかったが気管支腺由来の腫瘍が示唆され, 右上葉切除およびR2郭清を施行した。切除標本では腫瘍は右B^1_b末梢発生と考えられ, 病理組織学的には異型紡鐘形細胞の肉腫様の増生が主体であり, 一部に腺癌組織や軟骨様構造をとる部分などの混在を認め, 唾液腺型悪性混合腫瘍(pT2N0M0)と診断した。本腫瘍は気管支腺の存在するVI次気管支までに発生する可能性があるが, 末梢発生は文献的に自験例を含め世界でも5例を数えるにすぎず, 極めて稀な症例と考え報告した。