抄録
経気管支的局所療法により, 肺門部早期扁平上皮癌の消失を認めた68歳男性例を報告した。昭和61年9月に, 胸部X線検査にて両側肺野の線維性変化と両側胸膜肥厚を指摘され, 精査目的に入院となった。気管支鏡検査を施行したところ, 右上葉B^1およびB^3の分岐部に小隆起性病変を認めた。組織学的に扁平上皮癌と診断し, 内視鏡的肺門部早期扁平上皮癌と考えられたが, 肺機能の問題より生検鉗子による鉗除と, PEPによる抗癌剤局所注入を施行した。以上の経気管支的局所療法により原発巣は完全に消失し, 現在まで3年6か月以上を経過したが, 再発は認めていない。今後さらに高齢者の増加にともない, 肺門部早期扁平上皮癌においても, 種々の理由により切除を断念せざるを得ない症例が増加すると思われる。その場合, 経気管支的局所療法は極めて有効と考えられ, 症例に応じた適切な局所療法を選択, 施行することが必要である。