気管支学
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食道静脈瘤硬化療法に伴う気管支粘膜所見の検討
中田 正幸
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1991 年 13 巻 6 号 p. 572-579

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抄録

食道静脈瘤を有する肝硬変患者20例に対して, 内視鏡的硬化療法施行の前後で気管支鏡検査を行い気管支粘膜の変化を観察した。20例中18例に気管支粘膜下の血管拡張がみられ, 特に左主気管支に強く認められた。軟骨輪部では短軸方向へ, 膜様部では長軸方向へ走行していた。血管拡張の程度を4段階に分類し, 食道静脈瘤の形態, 占拠部位との関係をみた。形態ではF1よりもF3の症例で, また占拠部位では静脈瘤が上部食道まで及ぶほど血管拡張は著明であった。気管支の潰瘍性病変は20例中6例(30%)にみられ, 1例は両側性であったが他の5例は左主気管支の輪状軟骨部に1&acd;数個認められた。潰瘍性病変は硬化療法前の食道静脈瘤の程度, 硬化剤注入量と相関は認められなかった。しかし肝予備能の悪化にともない出現率が有意(P<0.05)に増加した。気管支粘膜下の血管拡張は, 硬化療法による治療により軽度となり, 潰瘍性病変は悪化する傾向がみられた。これらの形成機序には胸部側副血行路の変化や動脈血酸素分圧の低下の関与が示唆された。

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© 1991 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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