1997 年 19 巻 5 号 p. 418-421
症例は65歳, 男性。腎癌にて腎臓摘出術後6ヵ月目に血痰が出現した。この時気管支鏡検査を施行したが, 異常は認めなかった。血痰出現より9ヵ月後, 気管支鏡にて左B^8から底幹にのびるポリープ状腫瘤を認め, 生検の結果腎癌転移と診断された。孤立性転移であること, 血痰が持続していることから下葉切除を施行した。切除標本ではさらにS^6末梢, S^<10>末梢にも微小結節を認め, 3病変とも気管支壁内への直接転移であった。他臓器および肺実質内への転移を伴わない腎癌の多発気管支壁内転移は極めて稀である。腎癌術後に血痰を認めた場合, 気管支鏡可視範囲より末梢の気管支壁内転移も念頭におく必要がある。