気管支学
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気管支ファイバースコープ所見による早期癌および進行癌における局在の検討 : 特に血管所見を中心に
雨宮 隆太林 永信永井 完治河内 堯早川 和志吉本 裕子滝沢 延彦鈴木 恵子
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1980 年 2 巻 2 号 p. 135-144

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抄録

肺癌の気管支鏡所見は日本気管支鏡所見分類委員会により設定されたもの(1979年)がある。肺癌の浸潤所見としては粘膜の凹凸不整、蒼白、光沢の消失、粘膜襞の肥厚と不明瞭があげられている。これらの多くは表層の粘膜上皮の所見であり、上皮下の所見を示唆する血管所見は「血管怒張」のみが記載されているだけで、細かい分析がなされていない。今回は肺癌症例の内、太い気管支の上皮下の性状を適確に表現していると考えられる血管の状態を主として検討した。正常な気管支では粘膜下に繊細な血管が樹枝状に均等な血管間距離で分布している。扁平上皮癌の上皮内浸潤を示す部分では、粘膜の透過性が消失するために血管を認め難くなる。しかし上皮下組織にまで癌の浸潤増生がある部分では、癌組織内に新生増殖した不整な螺旋状に走行する血管、種々なる程度の血管の拡張、血管の断裂像に加え、発赤、出血などが見られる。腺癌、小細胞癌など正常の粘膜を残して粘膜下に増生する傾向の強い組織型では、正常部分の血管が連続して腫瘍浸潤部表面を走行し、多くの場合血管拡張、怒張、増加する所見が認められる。

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© 1980 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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