1998 年 20 巻 2 号 p. 173-177
EMS (expandable metallic stent)使用に伴うトラブルを経験した。そのトラブルは(1)周囲に縫着したメッシュによる難治性の咳嗽, (2)気管壁損傷による気道内出血, (3)ワイヤーの間からの腫瘍の発育であった。(1)の1例は鎮咳剤の効果がなく癌死するまで継続して非常な苦痛を伴った。(2)の2例は喀血死した。(3)の1症例は腫瘍の増大に伴って著明な気道狭窄を呈したがEMSの中を通してDumon stentを留置し, 窒息死は回避しえた。EMSには容易に挿入が可能であるという非常に優れた点があるが, 以上の問題が重要であることから, EMSの対象を, 悪性腫瘍の終末期で腫瘍の壁外性の圧迫による気道狭窄が高度な症例に限定すべきものと考える。